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患者様インタビュー

Vol.1お母様インタビュー 第2回(全3回)2018.09

ある日突然、何の知識も、治療の方法もわからない状態で「側弯症かもしれない」と言われたら、誰もが不安になることでしょう。特に成長期の多感な時期に発症しやすい疾患だけに、保護者の方は特に一体どのように向き合うべきなのか心配なことと思います。しかし、側弯症では、正しい知識を持ち適切に治療することが最も重要です。
 そこで今回は、小学5年生の時に側弯症と診断されたお子さんを持つお母様に話を聞きました。3回にわたって、実際に母娘が側弯症とどのように向き合ってきたのか、流れを追って紹介していきます。

「側弯症」と診断され、定期的に病院に通うことになった娘さん。医師のアドバイスもあり不安も少し払拭されていきました。
第2回のインタビューでは、その後「装具治療」へと進んでいった時のことをふりかえっていただきました。ほぼ1日、コルセットを着けた生活が始まる中で、娘さんの不安・不満や、そんなお子さんと母親としてどう向き合ってきたかなどをお聞きしました。

「装具治療」に母娘で向き合う

── 経過観察をしていく中で、症状はどのように変化していきましたか?

診断→装具を作成→場合によっては再作成→成長終了したら装具脱
装具治療の流れ

お母様:通院するようになって1年半くらいが経った頃だと思いますが、側弯度が30度まで進んでしまったんです。成長期で進行しやすい年齢だったというのもあると思います。それでいよいよ装具治療を始めなければならないということになりました。

── 「装具治療」に対してはどんなイメージを持っていましたか?

お母様:最初『コルセットを着ける』と聞いた時、薬局などでも買える腰痛改善のためのゴムバンドのようなものをイメージしていたんです。でも、その時病院で先生に見せてもらったコルセットは、想像もしていなかったくらいハードで大きなものだったので、初めて見た時のことは、今考えても涙が出てしまうくらい衝撃的でした。

── お母様はもちろん、娘さんの精神的ダメージも大きかったですか?

お母様:この時も娘は泣いたりしませんでしたが、やっぱり一番泣きたかったのは娘だったと思います。その気持ちがわかるから、余計に私が泣けてきてしまって。コルセットの装着は、日中は入浴時間以外は終日、睡眠時も着けて寝なければいけないので、想像するだけでも辛いし、本当にできることなら代わってあげたいと思いました。

装具装着写真、前、後ろ
アンダーアーム装具

── 装具を着けることに対して、娘さんは不安を口にすることはありませんでしたか?

お母様:不安というより不満を口にすることはありました。おしゃれもしたい年頃ですし、コルセットのせいで洋服がきつくなるとか、選べる洋服が少なくなるとか、とにかくいろいろ不満は出ましたね。それで、コルセットを終日着けなければいけないとなると、今度はさすがに体育の授業も部活もできなくなるだろうって諦めていたんですけど、それを先生に質問したところ、『体育も部活もこれまで通りやってください』と。『その間だけ、コルセットははずしていいです』という言葉をいただけて。その言葉に娘は一番救われたんじゃないかと思います。だから、辛くても治療を続けていこうと思えたのかもしれません。

── 実際に装具治療が始まってからは、「もう着けたくない」と言うことはなかったですか?

お母様:もちろんありました。内緒で着けてない日があったり、私が寝てからバレないようにはずして寝ていたり。あと、『学校に忘れてきた』とか、理由をつけて着けなかったりする日がありましたね。でも、気持ちは痛いほどわかるから、強く叱れないんですよ。だからそういう時は、本当にどう言えばいいのか悩みました。ただ、やっぱりこれ以上悪くなってほしくないというのが親心なので、『どうして着けないの?』とか、感情的にならないように話を聞いて、『辛いけど頑張ろう』って思えるように、コミュニケーションは取るようにしていましたね。私自身も、娘のコルセットを借りて、実際に着けてみたりしました。そうすると、思っていた以上に暑いし、重いしで、余計に強く叱ることはできなくなってしまいましたが。

── そうして時々はコルセットをはずしてしまうことがあっても、娘さんが前向きに治療を続けていこうと思えたのは、なぜだと思いますか?

お母様: ちゃんとゴールがあったからだと思います。コルセットを着け始めたのは、中学校に上がるちょっと前だったんですが、娘は先生に直接『これは、ずっと着けないといけないんですか?』って聞いていました。そこで、『ある程度、成長期を過ぎて骨の成長も落ち着けば、コルセットの装着時間は短くてよくなるし、一生着けるものではないから』と言ってもらえて、それを聞いてすごく気持ちがラクになったみたいでした。その期間を耐えれば、またおしゃれも楽しめるし、洋服選びも自由になるんだって。

── 女の子だけに、やはりおしゃれについての不満も出ますよね。

お母様: でも、娘は強い子だったのか、それすらもポジティブに考えてくれてたんですよ。この機会に新しい洋服をたくさん買ってもらえるって(笑)。スカートやパンツといったボトムスは、コルセットの分ウエストのサイズが変わるので、全部買い直さなければいけないし、トップスもコルセットが目立たないものを買いそろえたり。それを娘が前向きに捉えてくれたのは、私にとっても明るい材料でした。

第2回は終了です。次回の第3回の内容は「学校生活と装具治療」です。

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